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ファクタリングは違法?合法の根拠やサービサー法との兼ね合いについて解説
2024年9月22日
資金調達方法の一種として、ファクタリングが注目を集めています。
これをご覧の法人代表者の中でも、名前だけなら聞いたことがあるという人も多いでしょう。
しかし「ファクタリングって違法では?」と思う人もいるかもしれません。
結論から言いますと、ファクタリングは合法で決して違法ではありません。
今回はサービサー法との兼ね合いで、ファクタリングの存在について見ていきましょう。
目次
サービサー法について解説
ファクタリングと密接な関係のあるサービサー法についてまずは簡単に解説します。
1998年に公布、1999年に施行されました。
債権回収を円滑に進めるために成立した法律です。
債権回収会社でも債権回収が可能に
サービサー法が成立する前までは、債権回収を委託できるのは弁護士もしくは弁護士法人だけでした。
しかしサービサー法の成立によって、民間の債権回収会社も銀行などが保有する貸付債権など特定金銭債権の回収が可能になりました。
サービサー法が成立した背景には、バブル崩壊が大きく関係しています。
バブルがはじけてから、不良債権が大量に発生しました。
金融機関や弁護士だけでは、円滑な処理が難しくなるところまで大きな問題になりました。
そこで大量発生した不良債権の円滑な処理を目的にして、サービサー法が成立したわけです。
弁護士法の特例といった建付けで施行されました。
サービサー法の3要件
サービサー法が成立したことで、弁護士資格を持たない法人でも債権回収が可能になりました。
しかし債権回収会社、いわゆるサービサーになるには法務大臣の許可が必要です。
サービサー法では認可を受けるには、以下の3つの条件を満たさなければならないとしています。
1.資本金が5億円以上
2.常務に従事する取締役の中に弁護士が1名以上いる
3.反社会勢力とかかわりがない
この3つの条件をすべて満たしていれば、民間会社がサービサーとして活動できます。
弁護士をつける条件に関しては、社内から業務全般を監視する目的があります。
このため弁護士に関する適格性に関しても審査しなければなりません。
具体的には法務大臣が日本弁護士連合会の意見も踏まえて、総合的に判断する形になります。
また反社の勢力を排除するのは、ほかの業界と同様です。
こちらも警察庁長官から意見を聞き取り、反社の関係者かどうかチェックします。
サービサー法と特定金銭債権
サービサー法では、金銭債権を民間企業でも回収できると認めています。
しかしどのような金銭債権でも回収できるかと言えば、そうではありません。
サービサー法で回収が認められているのは、一部の特定金銭債権です。
サービサー法で回収が認められている「一部の債権」とは、以下の通りです。
1.銀行や消費者金融などが持つ貸付債権
2.リースやクレジット債権
3.特定目的会社が流動化対象資産として保有する金銭債権
4.法的倒産手続き中の法人などが保有する金銭債権
5.保証会社などが持つ求償債権
6.政令指定で定める特定金銭債権
これ以外の債権に関しては、たとえサービサー法で法務大臣の認可を受けた法人でも債権回収はできません。
ファクタリングとサービサー法との兼ね合い
「ファクタリングって違法ではないか?」資金繰りに苦しんでいて、ファクタリングに興味のある法人代表者の中にはこのような懸念を抱く人もいるでしょう。
先ほど紹介した「特定金銭債権」の項目の中に、売掛債権はありません。
すると「ファクタリングはサービサー法違反かも?」と思うかもしれません。
しかしファクタリングはサービサー法の中でも認められたサービスです。
ここではファクタリングとサービサー法の関連性を中心に見ていきましょう。
サービサー法では条件付きで売掛債権の回収が可能に
サービサー法の中で書かれている特定金銭債権の中に、売掛債権は確かにありませんでした。
サービサー法の中で債権回収を認めているのは、支払期日を過ぎた特定金銭債権の管理や回収が可能です。
ファクタリングはまだ支払期限を迎えていない売掛債権の常住と回収をするサービスです。
するとサービサー法の中でファクタリングは認められない経済活動となってしまいます。
しかし特別な条件を満たしているのであれば、売掛債権の回収業務をおこなえるとしています。
その条件とは「債務者の財務状況が悪化し、債権回収できなかった場合に債務に関する責任をすべて負う」というものです。
さらに債権回収会社を関連会社として、こちらに回収した債権管理を任せることでサービサー法の条件をクリアしています。
これでファクタリング事業者は債権管理や回収を直接行っているわけではなくなり、サービサー法に引っかかることもありません。
サービサー法の理念にも一致
そもそもサービサー法が成立した背景には、経済活動の活性化を促すことがありました。
実際、サービサー法の理念には「経済発展を促すための機能を果たす」ことも盛り込まれています。
ファクタリングは利用法人から売掛債権を譲受します。
そのうえで売掛債権を買い取り、法人に資金供給を行うサービスです。
法人に資金供給して、経済発展を活性化させるサービサー法の理念にも一致しています。
よってファクタリングが取り扱う売掛債権もサービサー法における特定金銭債権の一つに加えられました。
サービサー法以外から見たファクタリングの合法性
サービサー法で定められている特定金銭債権の中に、売掛債権も含まれています。
売掛債権を買い取り、利用法人に代わって売掛先から債権回収するファクタリングはサービサー法上問題ありません。
しかしサービサー法以外の法律に引っかかってしまうのではないかと思う法人代表者もいるでしょう。
結論から言えば、ファクタリングはどの法律にも引っかからないサービスであり、活用しても問題ありません。
サービサー法以外の根拠について、以下にまとめました。
売掛債権の譲渡は可能
ファクタリングは利用法人から売掛債権を譲り受けて、その代金を支払うサービスです。
このような売掛債権の常とは、合法な行為と規定されています。
民法の中でも、債権の譲渡は可能であると明記されています。
ファクタリングは法人が保有する売掛債権をファクタリング業者に移した上で、譲渡の対価として買取代金を受け取る契約です。
つまり法的に認められている債権譲渡契約の一種であると解釈できます。
譲渡禁止の特約付きでも有効
売掛債権の譲渡を禁じる特約が契約の中に設けられている場合もあるでしょう。
契約書に譲渡禁止と書かれていれば、ファクタリングは利用できないと思うでしょう。
しかし譲渡を禁じる特約が明記されていても、ファクタリングの利用は可能です。
その背景には、2001年に制定された売掛債権担保融資保証制度があります。
しかしこの新たに設定された融資制度は、なかなか普及しませんでした。
譲渡禁止の特約が制度利用のネックになっていたためです。
このように譲渡禁止の特約は、いわば目の上のたんこぶ状態になっていました。
債権の価値を下げますし、流動性の点でも問題です。
そこで2020年に施行された債権法の中で、債権譲渡禁止の特約があっても売掛債権の譲渡を可能にしました。
たとえ先方の同意がなくても売掛債権の譲渡も可能になりました。
債権禁止の特約が明記されていても、売掛債権譲渡の効力は一切妨げられません。
「ファクタリングを利用したいけれども債権譲渡はできない契約になっているし…」と躊躇している人もいるでしょう。
しかし上で紹介した法律の通りで、禁止条項があっても譲渡は可能です。
2社間を利用すれば取引先に知られない
「禁止特約があっても譲渡できたとしても先方との信頼関係にひびが入るのでは?」と思う人もいるでしょう。
ファクタリングの中には、取引先に知られることなく売掛債権を譲渡できるシステムがあります。
それが2社間ファクタリングです。
2社間とは利用法人とファクタリング業者の2社を指します。
売掛債権を業者に譲渡して、代金を受け取ります。
そしていつものように売掛先から売掛金を回収して、業者に代金を引き渡せば良いわけです。
このように取引先に債権譲渡したことは知られずに済むので、信頼関係にひびの入る心配もありません。
違法なファクタリングに注意
サービス自体はサービサー法をはじめ違法ではありませんが、中には悪徳業者が存在することも頭に入れておきましょう。
金融庁でも違法業者に対する注意喚起を促しているほどです。
では具体的にどのような行為が違法なのか、ここで紹介するので引っかからないように注意してください。
給与を債権として譲渡できない
違法なサービスの一つとしてよく言われるのが、給与ファクタリングです。
会社勤めなどをしていると、月々決まった額の給料を受け取るでしょう。
この給料を一種の債権として、こちらを業者に売却して、給料日が来る前に現金を調達する手法です。
「給料の前借」のようなサービスだと思えば、イメージしやすいでしょう。
一見すると問題ないように見えるかもしれません。
しかし金融庁では、個人的な給料を買い取るのは貸金行為に当たるという解釈です。
このため、貸金業者の届出を行っているところでなければ営業できません。
もし貸金業登録をしていなければ、立派な違法業者です。
違法な行為をしているので法外な高額手数料を請求されたり、暴力的な取り立てに悩まされたりする可能性があるので注意してください。
ファクタリングの名を借りた融資
金融庁でも指摘していますが、一見するとファクタリング、しかし実態は高金利の融資という事例が散見されるようです。
闇金の新たな手法として、注意喚起しています。
偽装ファクタリングともいえますが、どのような手法をとっているのでしょうか?
多いのは償還請求権付きの契約です。
償還請求権とはもし債権回収できなかったら、利用法人に補償を要求する権利のことです。
しかしこれは別項で紹介しているように、サービサー法の条件に反しています。
サービサー法では譲渡した債権に関する責任を負うことが条件で、債権の売買を認めています。
この責任を利用法人にかぶせているので違法行為です。
金融庁ではこのような償還請求権のついている契約は、売掛債権を担保にした融資と解釈しています。
貸付行為なので、貸金業登録が必要です。
登録していなければ、違法業者になるわけです。
普通のファクタリングでは、償還請求権なしのノンリコース契約でなければなりません。
契約書を確認して、デフォルトになった場合こちらに責任を求める条項がないかしっかり確認してください。
ファクタリングとサービサー法に関するまとめ
初めて利用する際に「ファクタリングは違法行為ではないのか?」といぶかる法人代表者もいるでしょう。
しかしここで紹介したサービサー法をはじめ、ファクタリングは合法な取引で後に法に問われる心配はありません。
むしろ早期に資金調達することで、キャッシュフローの改善が期待できます。
ただしすべての業者がコンプライアンスにのっとった営業を行っているとは限りません。
ここで紹介したように看板はファクタリングのように見えて、実はただの貸付行為だったといったことも起こりえます。
合法的な業者かしっかり見極めてから、申し込み手続きを進めてください。