お知らせ
Message
ファクタリングは法改正で変わった?
法改正後のファクタリングについて解説
2024年2月20日
ファクタリングは、上手に活用すれば、非常に運用資金の確保に役立つ手段になります。ファクタリングに関係する法律は、さまざまなものがありますが、その中でも2020年の民法の法改正はファクタリングを活用しやすくなる、きっかけとなりました。
ここでは、その民法の法改正によって起こったファクタリングの変化について解説していきます。
目次
2020年の民法改正によるファクタリングの変化
2020年の民法の法改正によって、ファクタリングの基礎となる債権譲渡に大きな変化がありました。この法改正によって、改正前は不可能であった契約形態に対応できるようになったりし、ファクタリングを会社の運営資金確保に活用しやすくなったのです。
それでは、法改正によって変化したファクタリングに詳しい内容について解説していきましょう。
債権譲渡制限があっても譲渡有効となった
通常の企業間などの売掛債権契約では、「債権譲渡禁止特約」という、売掛債権の譲渡を禁ずるファクタリングの障害となる契約方法が存在していました。そのため、法改正前の民法上では、譲渡禁止特約付きの契約を行っている場合は、ファクタリングができないとされていたのです。
しかしながら、法改正によって、債権の譲渡性について規定している民法466条2項に「当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。」という条文が追加されました。この法改正で、原則として債権の譲渡制限がなくなったのです。
ただし、ファクタリングを2社間や3社間のどのような形で債権譲渡契約を行うかによって、対応方法も変化します。そのため、必ずしもすべてのケースにおいてファクタリングが可能とは言えませんが、法改正前に比べると格段にファクタリングを行いやすくなったと言えるのです。
債務者は譲受人への支払い拒否が可能となった
債権譲渡の制限がなくなったことによって、債権者は第3者に債権を譲渡できるようになりましたが、法改正では債務者の権利にも変化が起きています。
その内容としては、法改正後の民法第466条3項に「前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。」と規定されています。
この法改正では、ファクタリングにおいて債務者は、移行された債権の譲受人への支払いを拒否でき、元々の債権者などに対して支払いをすれば良いことが規定されています。そうしたことから、ファクタリングが行われていても、債務の支払い先をいずれにするかを債務者が選択可能となっているのです。
譲受人は債務者に対して債権者への支払い催促が可能となった
ファクタリングにおいて、債務者は必ずしも譲受人に債務の支払いをしなくてもよいですが、法改正では譲受人にも権利があります。
法改正後の民法第466条4項には「前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、その債務者については、適用しない。」という条文が追加されています。
この法改正では、ファクタリングの債権の譲受人は、債務者が支払いをしない場合は、支払いの催促を行えることが規定されています。ファクタリングにおける債務者は、支払先を選ぶ権利はあるものの、支払いの責任が免除されるわけではないため、支払いを怠れば債権の譲受人から督促を行われることもあるのです。
債権譲渡禁止特約と将来債権の変化
2020年の民法改正の中で、ファクタリングに影響が大きい変化は民法第466条に集約されていることは、ここまで解説したとおりです。ここまでの法改正の解説では、債権譲渡における、それぞれの立場の関係者の権利などにフォーカスして解説してきましたが、この法改正で、「債権譲渡禁止特約」と「将来債権」の扱いはファクタリングに大きい変化を与えています。
それでは、債権譲渡禁止特約と将来債権の変化について解説していきましょう。
債権譲渡禁止特約を設ける意味はある?
債権譲渡禁止特約とは、債権者としての地位を第三者などに譲渡することを禁止する規定です。債権に限らず、契約上の地位の移転をする際は、民法第539条の2において「第539条の2 契約の当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合において、その契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位は、その第三者に移転する。」との規定があります。この条文では、地位の移転をするには相手方の承諾が必要であるとされているのです。
ファクタリングでの債権譲渡は、2020年の民法改正によって、債権譲渡禁止特約があっても債権の譲渡は可能となりました。そうなると、契約時に債権譲渡禁止特約を設ける必要があるのか疑問に感じる方もいるでしょう。
そもそも、譲渡禁止特約を設ける理由としては、契約相手が変更されたことによる、予期せぬリスクを防止するためのものです。そのため、譲渡禁止特約を設けることで誤った相手への支払いや、契約相手の変更によって生じる手続きの煩雑を避けることなどを防止することにつながります。そうしたことから、現在も債権禁止特約を設けるのは通常の手続きとなっています。
民法改正でファクタリングを利用しやすくなったことにより、債権の譲渡を確実に防止することはできなくなったのは事実ではあります。しかし、債権譲渡を定める民法466条3項では、悪意や重過失のある第三者への債権譲渡は無効になることも定められているのです。そのため、万が一の事態に備えて譲渡禁止特約を設けることで、誤った相手への支払いを回避できることもあります。そうしたことから、譲渡禁止特約を契約書に設ける意味はあるといえるのです。
将来債権のファクタリングも可能になった
債権の中には、すでに支払日や金額などが確定している「確定債権」と、将来的に請求予定の「将来債権」というものがあります。将来債権は、支払いが本当に発生するのか不確実な部分もありますが、官公庁や行政機関、有名企業などの支払いの確実性が高い契約であればファクタリングに利用できることも多くなっているのです。
2020年の民法改正前までは、このような将来債権をファクタリングに利用することはできませんでしたが、法改正によって将来債権のファクタリングも可能になりました。法改正直後は将来債権のファクタリングを扱う会社は少数でしたが、現在は、将来債権のファクタリングを扱う会社も増加してきていることから、運営資金確保の手段として活用するのも現実的になっています。
法改正によって生まれた企業のメリット
ファクタリングに関係する法改正によって、法改正前までは、債権譲渡禁止特約の設定を行われるだけで、中小企業などは資金繰りに苦労していたのが現実でした。しかし、法改正が行われたことによって、さまざまなメリットも発生しています。法改正後に生まれた企業のメリットについて解説していきましょう。
債権を活用した資金調達が行いやすくなった
ファクタリングを活用できる場面が増えたことによって、とくに、中小企業などは、運営資金の確保が行いやすくなりました。法改正前の民法では、運営資金に限りのある中で支払い期日を待ったあとでなければ、次の仕事に取り掛かれない企業があった中で、ファクタリングを活用することで、運営資金だけでなく、次のビジネスチャンスへの取り組みも円滑に行えるようになったのです。
資金調達の目的による債権譲渡であれば契約は保護される
債権譲渡禁止特約が設定されている契約を行っている場合、いくら法改正後の民法で譲渡が許されていると言っても、ファクタリングを行ったことで取引先である債務者の反感を買ってしまって、契約解除などをされることを心配することもあるかと思います。
しかしながら、法務省はこの点について、譲渡に特段の不利益が出ていないにも関わらず、資金調達目的での債権譲渡を理由に、契約解除や損害賠償請求などを行うことは合理性に乏しく権利濫用に当たり得ると解釈を出しています。
そのため、資金調達のためのファクタリングであれば法律によって契約は保護され、一方的な契約解除や損害倍書などに対抗できる可能性があるのです。
ファクタリング法改正まとめ
ファクタリングは、法改正によって多くの選択肢を生み出しています。さまざまな場面において、ファクタリングを活用することによって、円滑に資金の運用を行えるようになるでしょう。
また、ファクタリングを行う際には、取引先の債務者との思わぬトラブルを防ぐためにも、知識と経験の豊富なファクタリング会社を利用することが大切です。契約書に債権譲渡禁止特約などが設定されていたとしても、ファクタリングは可能であるため、資金確保にお悩みの方は信頼できるファクタリング会社に相談するようにしましょう。