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経理に必要なファクタリングの知識|仕訳方法や帳簿作成時の注意点を融資と比較して解説!
2024年11月20日
会社を経営する中で、日々の金銭の流れや取引の流れを記録することは、経理の重要な仕事です。
ファクタリング利用時も、例外なく経理の仕訳は必要になります。
ただし、ファクタリングの仕訳は「未収入金」や「売掛債権売却損」など、普段あまり用いない勘定科目を使うため経理担当から難しいと思われがちです。
でも、ファクタリングの仕組みや流れを理解していれば、それほど難しいものでもありません。
この記事では、経理に必要なファクタリングの知識として、ファクタリング利用時の仕訳方法や注意点を解説します。
銀行融資等の借入と異なる点を比較しながら解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
経理の重要性
会社では、利益や資産を生み出すために、仕入れや販売、経費の支払い等、たくさんの金銭の流れが生じます。
経理では、それら日々の金銭や取引の流れを、毎度帳簿に記録しています。
どういった取引でどのような金銭の流れが生じたのかを、数値化して帳簿に記録することで、金銭の動きを可視化して管理することが可能になるでしょう。
経理は、会社を経営する上で非常に重要と言えます。
なぜ経理が重要か、それは数値化された資料を基に、会社の状況を知ることができるからと言えます。
今の会社の経営状況から、経営判断や次の一手の検討をすることができるのです。
とは言え、経理が毎回帳簿に記録することはなかなか大変な作業。
普段から慣れている取引内容なら、問題なく仕訳もできることでしょう。
ただし、なかなか利用する機会のないサービスなどの場合、経理でも仕訳方法がわからないということも珍しくありません。
資金調達手段のひとつであるファクタリングにおいても、例外なく仕訳の必要があります。
経理で必要となるファクタリングの知識を、融資の仕訳と比較しながら、以下に解説していきます。
融資を利用した際の仕訳
会社の資金が必要になった場合、資金調達手段としてまず頭に浮かぶのは、銀行等からの「融資」なのではないでしょうか。
融資を受けた場合の金銭の流れは以下の通り。
- 借入金が入金される
- 利息を支払う
- 借入金を返済する
これらの時点で経理処理が必要となります。
以下に各時点での経理が担当する仕訳方法の詳細を解説します。
なお、ここでは、銀行から6,000万円の融資(1,200万円は短期借入、4,800万円は長期借入)を受け、利息1万円で返済していく場合の仕訳方法を解説します。
①借入金の入金時
【借方;普通預金6,000万円】【貸方:短期借入金1,200万円、長期借入金4,800万円】
銀行から借入金が入金された時点では、借方を普通預金、貸方を「借入金」で処理します。
借入金は、1年以内に返済する「短期借入金」と、1年以上かけて返済する「長期借入金」に分けられます。
状況に応じた勘定科目で仕訳しましょう。
なお、手数料や印紙代(振込手数料5,000円、印紙代5,000円)がある場合の仕訳は、以下の通り。
【借方:普通預金5,999万円、租税公課5,000円、支払手数料5,000円】【貸方:短期借入金1,200万円、長期借入金4,800万円】
印紙代は「租税公課」、振込手数料は「支払手数料」の勘定科目で計上します。
②利息の支払い時
【借方:支払利息1万円】【貸方:普通預金1万円】
借入開始日から3か月は利息のみの支払いであるため、利息1万円を普通預金から支払うことになります。
利息は「支払利息」の勘定科目で処理します。
③借入金の返済時
【借方:短期借入金100万円、支払利息1万円】【貸方:普通預金101万円】
通常、借入金は毎月利息と元本を返済することになります。
上記の仕訳をすることで、借入金の元本100万円と利息1万円の合計101万円を、普通預金から返済したという処理ができます。
また、短期借入金と長期借入金を区別して仕訳をしている場合は、決算時に仕訳が必要となるため要注意。
この場合、来年度中に返済予定分の借入金を、帳簿上で長期借入金から短期借入金に振り替える仕訳が必要になります。
【借方:長期借入金1,200万円】【貸方:短期借入金1,200万円】
この仕訳を行うことで、来年度に返済予定の短期借入金1,200万円を、長期借入金から短期借入金に変更したことの経理処理が可能です。
ファクタリングを利用した際の仕訳
会社の資金が必要となった際、ファクタリングを利用して資金調達することも可能。
ファクタリングとは、売掛債権をファクタリング会社へ譲渡・売却することで、売掛金の早期現金化ができるサービスです。
ファクタリングは、融資のような借入ではないため、経理の仕訳においても用いる勘定科目も異なります。
ファクタリングは、2社間ファクタリングを利用した場合が、最も仕訳回数が多く、複雑になります。
2社間ファクタリングの仕訳方法を理解しておけば、3社間ファクタリングを利用した際もスムーズに仕訳を行えます。
そのため、ここでは売掛金1,000万円に対して、手数料10%の2社間ファクタリングを利用した場合の仕訳方法を解説します。
2社間ファクタリングを利用した際、以下のような流れで金銭取引が行われます。
- 売掛債権の発生
- ファクタリング契約完了
- 買取金の入金
- 売掛先からの売掛金の支払い
- ファクタリング会社への支払い
この5回のタイミングで仕訳を行う必要があります。
以下にそれぞれのタイミングでの仕訳の詳細を解説します。
①売掛債権の発生時
【借方:売掛金1,000万円】【貸方:売上1,000万円】
商品やサービスの提供により請求書を作成した時点で、売掛債権が発生します。
売掛債権が発生した時点では、実際に代金の支払いがない状態でも「売掛金」という形で仕訳をします。
そのため、売掛債権が発生した時点での勘定科目は「売掛金」と「売上」を用います。
②ファクタリング契約完了時
【借方:未収入金1,000万円】【貸方:売掛金1,000万円】
ファクタリング契約が完了した時点では、借方は売掛金から「未収入金」へ変わります。
未収入金とは、資産を売却し、あとで売却金額が入金される場合に記載する勘定科目であり、この段階ではまだ現金の調達は完了していません。
③ファクタリング会社からの買取金の入金時
【借方:普通預金900万円、売掛債権売却損100万円】【貸方:未収入金1,000万円】
ファクタリング会社から買取金の入金が行われると、未収入金は現金へと変わり、「普通預金」として仕訳されます。
また、ファクタリング利用時には発生した手数料は「売掛債権売却損」として計上するため、注意しましょう。
ただし、使用する会計ソフトに売掛債権売却損の勘定科目がない場合は、「割引料」や「雑損失」、「支払手数料」などの勘定科目を用いても問題ありません。
※2社間ファクタリングの場合、契約日と入金日が同日中に行われる「即日ファクタリング」が執り行われる場合もあります。
即日ファクタリングの場合、②のファクタリング契約完了時の仕訳は不要になります。
そのため、「未収入金」の勘定科目で仕訳を行う必要はなく、買取金が入金された時点で以下の仕訳をすれば問題ありません。
【借方:普通預金900万円、売掛債権売却損100万円】【貸方:売掛金1,000万円】
④売掛先からの売掛金の支払い時
【借方:普通預金1,000万円】【貸方:預り金1,000万円】
2社間ファクタリングでは、ファクタリングを利用した会社が一旦売掛金を受け取ることになります。
一旦利用会社に代金が振り込まれはしますが、この代金はファクタリング会社への支払いに充てる金額であるため、勘定科目は「預り金」を用いて計上するため要注意。
⑤ファクタリング会社への支払い時
【借方:預り金1,000万円】【貸方:普通預金1,000万円】
売掛先から受け取った代金をファクタリング会社へ支払うことで、2社間ファクタリングの取引は完了します。
そのため、回収した代金をファクタリング会社へ支払う時点では、借方を預り金、貸方を普通預金として仕訳をし、終了となります。
※なお、3社間ファクタリングの場合は、売掛金の代金は売掛先からファクタリング会社へ直接支払われます。
そのため、④売掛先からの売掛金の支払いと、⑤ファクタリング会社への支払いは生じず、仕訳をする必要もありません。
つまり、3社間ファクタリングの場合は、③ファクタリング会社から買取金の入金を受けた時点で、仕訳も完了します。
ファクタリングが決算書に与える効果
経理に必要な仕訳をご紹介してきましたが上からも分かるように、ファクタリングを利用して資金調達をした場合、「借入金」は存在しません。
つまり、ファクタリングは負債を抱えずに資金調達が可能であり、決算書の見栄えを良くします。
ファクタリングが決算書に与える効果を、以下に解説します。
法人税を削減できる
ファクタリング利用時には、必ず手数料が発生します。
ファクタリングの手数料は、仕訳の際に「売掛債権売却損」として計上します。
これは、ファクタリングを利用しない場合と比べて、手数料分「損が発生した」という扱いであり、経費として扱われるもの。
手数料を経費として処理できるため、手数料分だけ法人税を減らすことができます。
オフバランス化ができる
ファクタリングで得た資金は負債にならないため、経理の仕訳においても「借入金」という勘定項目が発生しません。
借入金が発生しないということは、負債を抱えない上に無駄な返済を行う必要もないということ。
ファクタリングを利用することで、賃借対照表における売掛金の項目を減らし、その分現金や預金を増やすこともできます。
さらに、売掛金の項目を消し、ファクタリングで得られた現金(預金)から借入金の返却をすることで、貸借対照表はよりスリムになるでしょう。
つまり、ファクタリングを利用することで、貸借対照表のオフバランス化を図ることができるのです。
銀行から融資を受けた場合、現金は増えますが、同時に借入金も増えるため、貸借対照表は大きくなります。
貸借対照表が大きくなると、余分な資産や負債が多いとみなされ、印象は悪くなります。
負債を増やさずに資金調達ができるファクタリングは非常に有用と言えます。
企業評価を上げられる
ファクタリングによりオフバランス化を図ることで、ROA(Return On Assets:総資産利益率)や自己資本比率が上昇します。
ROAとは、総資産から何%の利益を生み出すことができているかの指標であり、効率的な経営の指標として用いられるもの。
ROAが高いほど、効率の良い経営ができていると判断されます。
また、自己資本比率とは、総資産に占める自己資本(返済不要な資本)の割合であり、財務健全性の指標として用いられるものです。
自己資本率が高い会社ほど、財務健全性が高く、安定した会社と判断されやすくなるでしょう。
融資を受けやすくなる
借入をする場合は「きちんと返済することができる会社かどうか」の厳重な審査が行われます。
借入審査の際には、貸借対照表や決算書、資金繰り表をもとにROAや自己資本率を算出し、会社の健全性や財務状況の判断をするのが一般的。
ファクタリングによりオフバランス化され、スリムになった貸借対照表はとても見栄えが良く、効率的な経営が行えていると判断されやすいです。
また、ROAや自己資本率も高値になりやすいことに加え、ファクタリングにより資金繰りも改善しているため、資金繰り表の評価もプラスに働きます。
これらの理由から、ファクタリングを利用することで、融資を受けやすくなる可能性が高いと言えるでしょう。
ファクタリングで帳簿を作成する際の注意点
経理でファクタリングの処理をする場合の注意点を、以下に解説します。
発生主義で帳簿の作成をする必要がある
経理で帳簿作成をする場合、発生主義と現金主義の2通りの方法があります。
発生主義では、実際に入金がなくても売上が発生したタイミングで会計処理を行う必要があります。
対し、現金主義は、現金が入った段階で会計処理が行われるもの。
基本的にはどちらで帳簿の作成をしても問題はありません。
しかし、ファクタリングは、売上が発生してから実際に現金が入金されるまでの間に、様々な仕訳を行う必要があり、これは発生主義による方法で会計処理が行われます。
つまり、経理でファクタリングを利用する際は、発生主義で会計処理を行う必要があるので、注意しましょう。
ファクタリング契約で発生する費用は非課税
通常取引で生じた売掛債権(売上)には、消費税が発生します。
ファクタリングで売掛債権を譲渡・売却することは「金銭債権などの譲渡」にあたり、これは非課税取引であるため、消費税は発生しません。
つまり、ファクタリング手数料や、売掛債権売却によって受け取った現金には、消費税はかからないのです。
ファクタリングで発生する可能性のある消費税は、ファクタリング会社が出張訪問してきた際の交通費や、債権譲渡登記を司法書士に依頼した際の報酬程度。
ファクタリング契約自体には消費税が発生しないことは、経理上把握しておけるといいでしょう。
決算末期をまたぐ際は消費税が発生する
上記でも説明したように、経理がファクタリングを利用して資金調達をした場合、原則消費税は発生しません。
ただし、現金入金までに決算末期をまたいだ場合は、税金の支払いが必要となります。
例えば、年末にファクタリング契約を結び、年明け後に買取額の入金がされた場合など、決算期末をまたぐ場合には、売上に対して税金が課されます。
まだ入金されていない売上金額をもとに計算した法人税や消費税を支払わなければならないため、注意が必要です。
経理に必要なファクタリングの知識まとめ
この記事では、経理に必要なファクタリングの知識を紹介しました。
ファクタリングの仕訳は「未収入金」や「売掛債権売却損」など、普段用いない勘定科目を使用します。
そのため難しいと思われがちですが、ファクタリングの仕組みを理解していれば、それほど難しくありません。
ファクタリングで得た資金は「借入金」とならないため、オフバランス化を図ることができ、企業評価を高める可能性が高いです。
企業評価が高まるため、銀行融資などの借入を受けやすくなるというメリットも。
非課税取引であることや、決算末期をまたぐ場合の取り扱いなどの注意点に気をつけながら、効率的な資金調達を行えると良いでしょう。