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ファクタリングは弁護士法違反に該当する?債権回収の権利について解説
2024年6月17日
ファクタリングは事業者が所有する回収前の売掛債権を、業者が買い取るサービスです。
早めに債権を現金化することで、キャッシュフローの改善に役立ちます。
ところでファクタリングに関するネット記事を見てみると、「弁護士法に違反するのではないか?」というコンテンツも時折見られます。
サービスを利用することは、法律上問題ないかについて中心に見ていきます。
目次
ファクタリングと弁護士法はどう関連する?
法人の資金調達法であるファクタリングと弁護士法に何のつながりがあるのか、一般の方にはピンとこないかもしれません。
そこでまずは両者の兼ね合いについて見ていきましょう。
また弁護士法は弁護士に関わるルールなので、弁護士ではない自分たちには関係ないと思っている人もいるでしょう。
しかし弁護士法は弁護士でない人も頭に入れておいて損はない法律だと考えてください。
弁護士法とはどのような法律?
弁護士法とは、弁護士の使命や職務、権利、義務などに規定されている法律のことです。
こう見ると、「自分たちには関係ない」と弁護士資格を持たない人は思いがちです。
しかし弁護士法には資格を持たない者が、営利目的で法律に関わる業務を行ってはならないという規定もあります。
もし該当する営業行為を行えば、違法行為に問われかねません。
弁護士資格を持たない者が、弁護士法違反で起訴されることもあり得る話です。
弁護士法72条とファクタリングの兼ね合い
ファクタリングがなぜ弁護士法と関わってくるのか、まずは同法72条が関連するためです。
条文の中に「法律事務」というくだりがあります。
法律事務とは、債権者との相談や債務者との交渉を指します。
これら法律事務は、弁護士資格を持った者が行わないといけません。
ファクタリング業者ももし債権回収できなければ、債務者側との交渉を行います。
また債権買取する前に、債権者と面談するなど相談も受けているでしょう。
本来であればこのような法律事務を営利目的で行う場合、弁護士資格を持った者が担当しなければなりません。
よって、サービス自体が弁護士法違反に該当するのでは、という主張が出てくるわけです。
弁護士法73条とファクタリング
73条では、他人の権利を譲渡して訴訟や和解などの手段を用いて、権利を実行できないとしています。
ファクタリングは、売掛債権という他者の権利を譲渡して、債権回収する行為です。
弁護士法の中では弁護士の資格を保有しない人が営利目的で、債権回収することを禁じています。
となると「ファクタリングの行っている営業行為は弁護士違反に該当するのでは?」という議論が起こるわけです。
ファクタリングが合法である理由
上で見てきたように、弁護士法の条文を見るとファクタリング行為そのものが法律に抵触するのではないかと思う人もいるでしょう。
しかし結論から言いますが、ファクタリングは弁護士法その他の法規を見ても合法です。
なぜ合法と言い切れるのか、その根拠についてこちらで紹介しましょう。
「債権管理回収業における特別措置法」があるから
弁護士法の観点から見ても合法的なサービスであると言い切れるのは、債権管理回収業における特別措置法が制定されているからです。
法務大臣の認定を受けた株式会社であれば、特定金銭債権の管理や回収に関する一連の業務を運営できるという法律です。
さらに他人から譲渡を受けた特定金銭債権であれば、債権回収の目的のために訴訟や交渉をおこなえると定められています。
この特別措置法によって、新たに設立されたのが債権回収会社です。
「サービサー」という名前の業務を耳にしたことはありませんか?
サービサーこそ、こちらの特措法によって新たに出現したサービスです。
そしてファクタリング業者の有する売掛債権も特定金銭債権の中の一つとされます。
よって法律で認められた業者であり、たとえ弁護士資格を持たない者でも法律事務の一般を行っても、弁護士法上問題ないわけです。
特措法の趣旨にも合致している
ファクタリングが合法であると言える根拠として、この特措法の趣旨にも一致するサービスだからです。
特措法の中に「経済の活性化に寄与できる」という文言があります。
ファクタリングは、経済の活性化に貢献できるサービスと言えます。
ファクタリングでは、基本的に売掛債権が譲渡したときに回収不能でデフォルトに陥るリスクもセットで業者が背負う仕組みです。
リスクも一緒に譲受し資金繰りのお手伝いをし、経済の活性化に寄与しているとも言えます。
実際業者の中には、デフォルトリスクが低減されるような対策を試みているところも少なくありません。
たとえば債権回収業務は、自分たちではなく先に紹介したサービサーに委託しているところもあるほどです。
このように売掛債権回収リスクも引き受けていれば、ファクタリングは弁護士法はじめ各種関連法規に抵触することはありません。
ただし一部悪徳業者は、このリスクを引き受けていない場合もあります。
その場合には違法業者に問われかねないので、そのようなところを利用すべきではありません。
判例でも認められているファクタリング
ファクタリングによる債権譲渡が有効かどうか、裁判で争われたケースもあります。
とある法人で資金繰りが厳しくなって、ファクタリングサービスを利用しました。
するとその法人の債権を有している信用金庫が「債権譲渡は無効」だとして、請求権の確認に関する訴訟を起こしたことがありました。
法人はファクタリングを利用し、債権譲渡する代わりに資金調達を受けています。
しかしのちのその法人が倒産してしまって、債務整理手続きが進められることになります。
原告の信用金庫への借入金も未払い状態になっていたので、仮押さえ命令を取得しました。
ところがファクタリング業者に債権譲渡された分は、「権利が誰にあるのか不明」として、原告への弁済譲渡されませんでした。
そこで信用金庫側は「被告のファクタリング会社への債権譲渡は無効で、請求権を求める」として提訴したわけです。
原告が譲渡無効を主張する根拠として、2点を挙げました。
まず問題の売掛債権には譲渡禁止特約が付いていた点です。
たとえ被告がその事実を知らなかったとしても、重過失のため譲渡は無効であるという主張です。
もう一つ先ほどに紹介したように、弁護士73条に違反する行為であるという主張で無効を求めました。
しかし結果的には被告側の勝利に終わりました。
裁判でも債権譲渡禁止特約の付いていたことは認められています。
しかし被告は債権買取するにあたって、法人から確認書や同意書を取っていました。
債権譲渡禁止特約が付いていないことを慎重に確認していますし、法人代表者が虚偽申告していると疑われるようなこともありませんでした。
そこで原告の主張する、重過失は認められません。
弁護士法73条の問題ですが、弁護士でない者がみだりに紛争を助長することが禁じられています。
ファクタリングは債権を買取して、手数料で報酬を得ることが目的の営業行為です。
このこと自体、訴訟や紛争をみだりに誘発するとは言えません。
債権買取した行為に、紛争を引き起こそうという目的も認められないので弁護士法違反にもならないという結論でした。
このようにファクタリングは合法的な営業行為であることが、裁判でも認められたわけです。
きちんとした業者を利用する分には、トラブルに巻き込まれる心配はないでしょう。
弁護士法違反の可能性がある悪徳業者の特徴
ここまで見てきたように、ファクタリングは弁護士法をはじめ違法に問われるようなサービスではありません。
しかしあくまでもサービスそのものが違法行為ではないという意味です。
個別の業者を見れば、弁護士法など違法行為を行っているところもあります。
悪徳業者の特徴として以下のような項目があります。
1.実質融資契約である
2.手数料が法外
3.審査なし
4.契約書や見積書を作成してくれない
5.現金を手渡しする
もし以上のような特徴を持った業者があれば、利用すべきではありません。
1.実質融資契約である
もし名目上は「ファクタリング」であっても、実質的には融資契約であれば要注意です。
それは償還請求権付の契約の場合が該当します。
償還請求権とは、譲受した売掛債権が回収できなかった場合、譲渡側に代金請求できる権利のことです。
ファクタリングが合法と認められているのは、デフォルトリスクも譲渡によって一緒に引き受けた場合です。
償還請求権があれば、リスクを引き受けていないと解釈できます。
またこの契約であれば、実質的には売掛金を担保にした融資契約です。
融資なので、貸金業者登録していなければ、違法業者になります。
このような契約を提案してきた業者があれば、そこでの債権売却は慎重に考えた方が良いでしょう。
2.手数料が法外
弁護士法に抵触しているかもしれない悪質な業者の特徴として、手数料が異常に高い点も挙げられます。
ファクタリングでは、売掛金を額面通り買い取るのではなく、一定の手数料を差し引いて現金化します。
手数料は各業者自由に設定していますが、3社間が1〜9%、2社間で10〜20%が相場です。
もしこれよりも異常に高い手数料設定しているところは、利用すべきではありません。
また逆に手数料が相場よりもかなりの低率で宣伝しているところも一部あります。
中には手数料が限りなく0%に近い低率で広告を出しているところも見られます。
しかしこれは、お客さんを食いつかせるためのいわばおとり広告である可能性が高いでしょう。
実際に契約する段になって、あれこれ名目をつけて多くの手数料を取るパターンも少なくありません。
一見すると魅力的な条件に騙されないように注意してください。
3.審査なし
業者の中にはチラシなどで、「審査なし、どのような債権も買取可能!」としているものも見られます。
一見すると親切な感じがするかもしれませんが、これも悪徳業者の定番の手口です。
回収できるかどうかわからない債権も買取してしまえば、経営が続けられません。
普通のファクタリング業者であれば、申請があれば審査を実施します。
債権回収が可能か、架空のものではないか、いろいろな書類を提出させて確認します。
そして問題なしと判断されたものは譲受する流れです。
審査なしのサービスなどありえないと思ってください。
4.契約書や見積書を作成してくれない
ファクタリングサービスを利用する際には、どの程度の額で買取してくれるか見積書を作成します。
その内容に納得できたところで契約書を作成、署名捺印してビジネス成立です。
しかし業者の中には、電話など口頭での約束だけで交渉を進めようとするところも一部あるようです。
このような基本的な書類を作成しないようなところは、弁護士法違反で業務を行っている可能性があるので注意してください。
なぜ文書で話を進めようとしないのか、それは文書を残すと後々不利になる恐れがあるからです。
つまりこちらにとっては不利な条件で債権買取をしようと推測されるので、利用しない方が賢明です。
5.現金を手渡しする
通常買取代金は、お客さんの指定する口座に入金します。
口座振込であれば、確実に決められた金額が支払われたことの証明になるからです。
ファクタリングに限らず、どの企業間取引でも口座を介してやり取りされます。
ところがファクタリングの買取価格を現金にて、手渡ししようとするところも一部あります。
このような業者にも注意してください。
基本的に契約書や見積書を作成しないのと理由は同じです。
入金の記録を残さないために、現金での手渡しをしようというわけです。
「即金、現金手渡し」と言われると資金繰りに窮している法人にとってはありがたいかもしれません。
しかし悪徳業者の可能性大なので、口座振込している業者を利用してください。
ファクタリングと弁護士法のまとめ
弁護士法の内容を見ると、ファクタリングが非合法ではないかと思う人もいるかもしれません。
しかしここで見てきたように、ファクタリングサービス自体は合法ですし、裁判でも認められていることです。
ただし業者の中には弁護士法に抵触するような、あくどい商売をしているところもあります。
ここで紹介した悪徳業者の手口を参考に、健全な業者を利用するよう心がけてください。