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インボイス制度導入がファクタリングに与える影響とは?~2023年10月より始まるインボイス制度が資金繰りにどう関わってくるか~
2024年1月16日
2023年10月から「インボイス制度」が本格的に導入されます。
このインボイス制度は消費税に関する制度であり、課税事業者は適格請求書発行事業者であることを政府に登録することが推奨されます。
特に個人事業主やフリーランスの方にとっては影響が大きいインボイス制度ですが、ファクタリングには何かしらの関係性があるのでしょうか。
今回の記事では、インボイス制度の概要からファクタリングに与える影響や会計処理、需要について一挙解説します。
目次
そもそも「インボイス制度」ってなに?
2023年10月から「インボイス制度」と呼ばれる消費税に関する制度が新たにスタートします。
インボイス(Invoice)とは日本語に訳すと「請求書」であり、インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」といいます。
適格請求書とは、消費税の税率や税額を正しく分けて記載している請求書のことであり、後ほど詳しく説明させていただきます。
では、インボイス制度とは実際にどのような内容なのでしょうか。
インボイス制度の目的
インボイス制度によって、これまで各々の形式で作成していた請求書や領収書が、指定されたフォーマットに統一されます。
一体どのような目的で請求書や領収書の形式を揃え、そもそもインボイス制度の導入の目的はなんなのでしょうか。
今回はインボイス制度導入の目的を2つご紹介します。
①「益税」をなくす
1つ目の目的は益税をなくすためです。
益税とは、支払消費税のうち、納税されずに合法的に手元に利益として残った消費税のことを指します。
益税が発生する原因として、存在する事業者がすべて課税事業者ではなく、免税事業者や簡易課税制度に対応している事業も混在していることによって生じる差額です。
益税が増えるということは、国に納められる税金が減るということです。
この益税をなくすために、インボイス制度を導入し、課税事業者の仕入控除額を正しく算定しなければなりません。
②複数の税率に対応する
2つ目の目的は複数の税率に対応するためです。
2019年の軽減税率導入により、消費税が8%と10%、この2種類が混在するようになりました。
消費税率別に税額を計算しなければ、正しい納税額が算出されません。
今回のインボイス制度導入に伴い、適格請求書に統一することで、複数の税率に対しても正確に対応することが目的の1つになります。
適格請求書の記載内容
実際に適用される「適格請求書」の記載内容は、従来の請求書と何が違うのでしょうか。
従来の請求書、軽減税率導入後の請求書(区分記載請求書)、適格請求書の3つを比較します。
①従来の請求書(~2019.9、軽減税率導入前)
・発行者氏名または名称
・取引年月日
・取引内容
・対価の金額
・受領者氏名または名称
②区分記載請求書(2019.10~、軽減税率導入後)
・軽減税率の対象商品であることが分かる印
・税率ごとに合計した税込み価格
③適格請求書(2023.10~)
・適用税率
・税率ごとの消費税
・適格請求書発行事業者の登録番号
このように請求書に記載される内容が、消費税額を適切に計算できるように進化していっていることが分かります。
消費税額を正確に算出することによって、仕入額を控除します。
次に「仕入額控除」について解説させていただきます。
「仕入額控除」とは
仕入額控除とは、自社の売上時の受取消費税から仕入れをした際の支払消費税を差し引いた差額を納税することです。
例えば、税込1100円で仕入れた商品を税込3300円で売却するとします。(消費税10%)
その場合、支払消費税が100円、受取消費税が330円となり、仕入額控除が適用された場合、納税額は330-100=230円となります。
ですが、インボイス制度が導入されることによって、課税事業者として適格請求書発行事業者に登録されている者同士間の取引でしか、仕入額控除が適用されなくなります。
課税売上高1000万円以下の事業者は「免税事業者」であり、主に個人事業主やフリーランスの方々がこれに該当します。
免税事業者から商品を仕入れた場合、買い手側は仕入額控除が適用されません。そのため、免税事業者分の消費税についても買い手側が負担をしなければならなくなってしまうのです。
インボイス制度導入による影響
インボイス制度導入について反対運動などをよく見かけますが、実際にはどのような影響を与えるのでしょうか。
買い手側、売り手側、個人事業主・フリーランスの3つの視点から解説させていただきます。
買い手側(仕入側)
買い手側が課税事業者として適格請求書発行事業者としての登録を済ませているとします。
その場合、仕入先が免税事業者であった場合に、消費税を全額負担しなければならなくなります。
仕入額控除が適用されない場合、消費税率を10%として考えてみると、売り上げの一割が差し引かれてしまいます。
この事態を避け、利益を守るためには、仕入先を免税事業者ではなく、適格請求書発行事業者としての登録を受けている仕入先に変更する必要が生じます。
売り手側(サービス・商品提供側)
売り手側が免税事業者である場合、適格請求書を発行することができません。
そのため、買い手側は仕入額控除をすることができなくなります。
そうすると、今まで付き合ってきた取引先から関係を打ち切られる可能性も生じるでしょう。
個人事業主・フリーランス
個人事業主やフリーランスといった方々はほとんどの場合は免税事業者であると思います。
インボイス制度を導入することが個人事業主・フリーランスの方々に与える影響として、以下の2つが考えられます。
・買い手側の消費税負担による取引停止の可能性
・消費税分を値引きされる可能性
ですが、一個人に直接商売をしている、取引先も免税事業者、簡易課税を選択している業者などを取引先にしている場合、あまり影響はないでしょう。
ここまででインボイス制度の概要について解説していきました。
実際にインボイス制度の導入がファクタリングにどのように影響しているのか、以下から説明させていただきます。
インボイス制度導入がファクタリングに与える影響
インボイス制度の導入によって、ファクタリングによる資金調達に与える影響はほとんどありません。
これは、ファクタリング自体が非課税取引であるためです。
国税庁のホームページにも記載されており、「有価証券の取引」は非課税であると明記されてあります。ファクタリングはこの「有価証券の取引」に該当します。
つまり、ファクタリングは原則非課税での取引となりますので、インボイス制度導入による影響を直接的には受けないと考えてもよいでしょう。
インボイス制度導入によるファクタリング利用時の注意点
ファクタリングは非課税取引であるとお話ししましたが、いくつかの例外において注意すべきケースや消費税が発生するケースがあります。
①手数料値上げの可能性
インボイス制度導入を理由に、手数料の値上げをしたファクタリング会社もいるそうです。
これは、インボイス制度に伴う人件費や税金を手数料に上乗せしているものと考えられます。
②手数料に対しての消費税加算
ファクタリング会社が手数料に対して消費税を加算してきた場合、その業者は悪質である可能性があります。
先程も述べたように、ファクタリングは非課税取引であり、原則消費税がかかりません。
手数料に対して消費税を要求することは違法行為であり、そのような業者は避けるようにしましょう。
③ファクタリングにおいて消費税が発生するケース
ファクタリングは非課税取引であると説明しましたが、消費税が発生する例外があります。
これは、実際の売掛債権の取引で発生するわけではなく、取引に必要な付随する行為に消費税がかかることが多いです。
・債権譲渡登記を行った際の司法書士への報酬
・再ファクタリング
2社間ファクタリングにおいて、債権譲渡登記を求められる場合があります。
この登記は一般的に司法書士に依頼しますが、その報酬には消費税がかかります。
また、再ファクタリング(ファクタリング会社が買取した売掛債権を違うファクタリング会社に売却すること)をした場合も消費税が発生しますが、これはファクタリング会社間の話になります。
④適格請求書発行業者でなければファクタリングが利用できない可能性
インボイス制度開始後、消費税が発生した場合は適格請求書を発行しなければなりません。つまり、課税事業者として国に適格請求書発行事業者としての登録を済ませなければなりません。
ほとんどのファクタリング会社が適格請求書発行事業者としての登録を済ませているとは思いますが、利用者側が免税事業者のままであると請求書の規格が合わず、ファクタリングの利用が困難になるケースも想定できます。
基本的にファクタリングにおいて、請求書を提出することで売掛債権の所有を証明します。
そのため、請求書の規格が異なっている場合、提出書類としては適性がないと判断され、断られる可能性もあるでしょう。
以上がインボイス制度導入に伴うファクタリングの注意点でした。
あまりインボイス制度に左右されず、通常通り、ファクタリングができると考えてもらっても構いませんが、いくつかの例外のパターンもありますので、気を付けましょう。
ファクタリングの会計処理を再確認しよう
インボイス制度導入後であってもファクタリングの会計処理は従来のままです。
ファクタリングを利用した際の会計処理の一連の流れをご紹介します。
① 売掛金の発生
(借方)売掛金〇〇円
(貸方)売上〇〇円、仮受け消費税〇〇円
② ファクタリング契約
(借方)未収金〇〇円
(貸方)売掛金〇〇円
③ 債権譲渡
(借方)普通預金など〇〇円、売上債権売却損(手数料分)
(貸方)未収金〇〇円
④ 売掛金の回収
(借方)普通預金〇〇円
(貸方)預り金〇〇円
⑤ ファクタリング会社への支払い
(借方) 預り金〇〇円
(貸方)普通預金〇〇円
インボイス制度が導入したからといって、仕分けが変わることはありません。
従来のように受取消費税も仕分けるようにしましょう。
インボイス制度によるファクタリング需要はどうなる?
インボイス制度導入によりファクタリングの需要は高まるでしょう。
今回のインボイス制度導入によって、大きなダメージを受けるのは個人事業主・フリーランスの方々です。
今までであれば免税事業者として活動していた分、適格請求書発行事業者としての登録をするために課税事業者として認められた場合、その分納税をしなければなりません。
実際には、今回の制度導入に伴い、免税事業者から課税事業者へ移行された方を支援する施策はありますが、それでも、個人事業主やフリーランスの方々にとっては痛手となります。
ここで登場するのがファクタリングです。
ファクタリングによる資金調達はハードルが低く、個人事業主などであっても利用できる可能性が非常に高いです。
銀行融資などは法人のみに対応している場合がほとんどですし、ファクタリング会社の中でも独立系ファクタリング会社を選択することで、個人事業主・フリーランスの方々であってもお金を調達することができます。
また、適格請求書が発行されるようになると、請求書の精度が高まります。
その分、ファクタリングを活用しようと考える事業者の方も増えるでしょう。
インボイス制度導入をすることによって、ファクタリングの需要は多角方面から増加すると予想されます。
ファクタリングとインボイス制度のまとめ
ここまででファクタリングとインボイス制度の関係性について解説させていただきました。
本日の記事をまとめますと以下の通りです。
「インボイス制度」→正式名称は「適格請求書等保存方式」
●インボイス制度の目的
①「益税」をなくす
②複数の税率に対応する
●適格請求書の記載内容
・発行者氏名または名称・取引年月日
・取引内容・対価の金額・受領者氏名または名称
・適用税率・税率ごとの消費税
・適格請求書発行事業者の登録番号
●「仕入額控除」→自社の売上時の受取消費税から仕入れをした際の支払消費税を差し引いた差額を納税すること
●インボイス制度導入による影響
買い手側(仕入側)
・・・仕入先が免税事業者であった場合に、消費税を全額負担しなければならない
売り手側(サービス・商品提供側)
・・・取引先から関係を打ち切られる可能性がある
個人事業主・フリーランス
・買い手側の消費税負担による取引停止の可能性
・消費税分を値引きされる可能性
●インボイス制度導入がファクタリングに与える影響
→ファクタリングによる資金調達に与える影響はほとんどなし
●インボイス制度導入によるファクタリング時の注意点
①手数料値上げの可能性
②手数料に対しての消費税加算
③ファクタリングにおいて消費税が発生するケース
④適格請求書発行業者でなければファクタリングが利用できない可能性
●ファクタリングの会計処理はインボイス導入前と変化なし
●インボイス制度によるファクタリング需要は増加見込み
インボイス制度とファクタリングの関係性についてご理解いただけたでしょうか。
ファクタリングは非課税取引に該当するため、インボイス制度のような消費税に関する制度は関係ないと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、案外無関係ではありません。
いろいろな面で影響を受けていることが分かっていただけたかと思います。
今回の記事を参考にしていただき、インボイス制度導入によるファクタリングはどうなるの?と不安や疑問を抱えていた方々の参考になれば幸いです。
最後までお読みいただき誠にありがとうございました。