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ファクタリングとABLそれぞれの特徴、注意点、おすすめの人を解説
2024年1月10日
資金調達をしたい時は銀行融資、ビジネスローン、ファクタリング、手形割引、ABLなど、さまざまな手段があります。
今回はファクタリングとABLの2つに焦点を当て、それぞれの特徴や注意点、比較ポイントなどをまとめてみました。
ファクタリングもABLもいずれも売掛債権を用いて資金調達する方法です。
ですが、取引や手続き、審査の内容など、その中身を見ていくと、違う部分が結構多くあります。ファクタリングとABLのそれぞれの仕組みを知って、資金調達に役立てていきましょう。
ファクタリングの特徴
まずはファクタリングの特徴について解説します。
ファクタリングは売掛債権を専門の業者に買い取ってもらい、額面から手数料を引いた金額を早期に資金化する資金調達の方法です。
売掛先を含まない「2社間」の契約と、売掛先も含んだ「3社間」の2通りがあります。
売掛債権だけではなく、診療報酬債権、介護報酬債権などさまざまな業種の債権の買取ができるほか、最近では注文書の買取をしている業者も見られます。
長い支払いサイクルを短縮できる効果があるのが特徴です。
もっと具体的にファクタリングの特徴を見ていきましょう。
売掛債権の買取である
ファクタリングは融資の資金調達ではなく、売掛債権の買取なので、担保や保証人は必要ありません。融資のように長期に渡り毎月返済するのではなく、ファクタリングは売掛金から入金次第、一括で弁済していくことになります。
審査のメインは売掛先企業
ファクタリングには審査があります。審査は基本的には売掛先の信用力や経営状態がメインです。
申込者の情報はさほど重視されないため、税金や各種ローンの滞納、赤字決算があっても問題なくファクタリングできるケースが多いです。むしろ、それをウリにしているファクタリング業者も多いと言っても良いでしょう。
ただし、売掛先企業が個人である場合はファクタリングに対応していないケースが多いため、注意しましょう。
手数料が高め
ファクタリングの手数料はABLに比べてやや高めです。融資のように法的に上限手数料が決まっていないため、ファクタリング業者が独自でそれぞれに設定ができます。
しかし手数料にはある程度の相場があります。2社間は5%〜20%、3社間は1%〜9%程度です。
この相場を著しく上回っている場合は、悪徳業者の可能性もあるため注意しましょう。
ファクタリングの注意点
ファクタリングを利用するときの注意点を解説します。
● 資金調達できる金額
● 悪徳業者の存在
● 依存するとなかなか止められない
資金調達できる金額
ファクタリングは売掛債権の額面までしか資金調達できません。厳密に言えば買取してもらう売掛債権の額面からファクタリングの利用手数料を引いた分が資金調達できる金額です。
例えば100万円の売掛債権を10%の手数料でファクタリングした場合、資金化できる金額は90万円です。
売掛債権の額面以上の資金調達を考えている場合は、ファクタリングではなく他の手段を検討する必要があります。
複数の売掛債権があればまとめて売却もできますが、その場合でも資金化できる金額は額面から手数料を引いた分だけということを覚えておきましょう。
逆に、ファクタリングは額面の一部だけ買い取ってもらうことができます。
悪質業者の存在
残念ながらファクタリングには悪徳業者が存在している事実も否めません。
悪徳業者の多くは、ファクタリングを装ったヤミ金業者です。
少し前には「給料ファクタリング」と称して会社員向けに違法なファクタリングを行っていた業者も存在しました。ヤミ金業者が関わっていることで数年前に摘発されたこともあり、現在では給料ファクタリングはほとんど姿を消しています。
しかし、事業者向けのファクタリングにおいてはファクタリングを装った貸付を行っている事案が確認されており、金融庁では注意喚起がなされています。
ファクタリングを利用する際は、悪徳業者に引っかからないように十分に気をつける必要があります。
依存するとなかなか止められない
申し込みから資金調達できるまでが早いため、支払いサイトを短縮したい時に便利なファクタリングですが、依存するとなかなか止められないケースもあります。
融資に比べてやや手数料が高くなるため、定期的にファクタリングを利用しているとコストが負担となり、なかなかファクタリングから抜け出せなくなることもあります。
計画的な利用を心がけることが大事です。また、ファクタリング業者の中には経営コンサルのようなサービスを行っているところもあります。資金繰りの改善なども合わせて相談すると良いでしょう。
ABLの特徴
ABL(Asset Based Lending)とは、設備などの動産、在庫、売掛債権などの担保を用いて資金調達する方法です。ファクタリングは民間の業者が中心となっている一方で、ABLは銀行、信用金庫、ノンバンクで利用できます。
財産や事業価値を見極め資金を融資します。
ABLは融資ではありますが銀行融資やビジネスローンと違い、利用者の信用スコアや財務諸表に基づく融資条件を必ずしも満たしている必要はありません。あくまでも担保とするものの価値を重点に考えられています。そのため、金融ブラックや赤字経営といったリスクを負っている人でも資金調達の有効な選択肢となります。
ABLの利用には利息手数料はかかりますが、融資のため貸金業法の上限利息が適用されます。そのため、手数料の上限が定められていないファクタリングとは違い、20%を超えることがありません。
ABLを利用する時に担保とする財産は登記手続きを行う必要があります。在庫などの動産であれば動産譲渡登記、売掛債権であれば債権譲渡登記です。
ABLの注意点
ABLの注意点にはどのようなものがあるか解説します。
● 資金調達まで時間がかかる
● 定期的な報告義務がある
● 売掛先の倒産が起きれば連鎖倒産のリスクがある
資金調達まで時間がかかる
ABLの注意点は、資金調達までに時間がかかることです。
担保にする資産の評価を調査や企業側の登記手続きなどが必要なため、資金調達までに時間がかかります。
定期的な報告義務がある
ABLで担保とする資産は、在庫や売掛金など流動性が高いものです。資金調達の際、これらの財産を担保として設定はしますが、これまでと同様に手元に置いておくことが可能です。もちろん、事業で必要であれば使っても構いません。
そういう理由からも、ABLを利用する金融機関には定期的に担保の状況などを報告する必要があります。
ABLで資金調達した場合は、基本的に1年以内に返済とします。この1年の間に定期的に報告をしていきます。
売掛先の倒産が起きれば連鎖倒産のリスクがある
もし売掛債権を担保とした場合、売掛先が倒産した時には貸し倒れの注意が必要です。
ABLは融資のため、償還請求権(リコース)のある契約となります。そのため、売掛金が回収できなくなった場合でも、利用者は返済を続けなければなりません。
ABLは融資なので一括での返済ではなくて、分割で返済ができます。また、売掛債権を現金化したものではなく、あくまで担保ですので、売掛先から入金がない分は他でカバーしやすいとも言えます。
とはいえ、連鎖倒産のリスクは少なからずありますので、注意しましょう。
ファクタリングとABLの違いは?
ファクタリングとABL、それぞれの特徴を確認してきました。
ファクタリングは売掛債権を売却して資金を得る手法、ABLは売掛債権などを担保とした融資で資金を得る手法です。
売掛債権を用いて資金調達を得る場合、ファクタリングとABLにはどんな違いがあるのか解説します。
● 資金調達できる金額
● 手数料
● 入金スピード
● 債権譲渡登記
● 個人事業主・フリーランスへの対応
● 貸し倒れのリスク
● オンライン対応
資金調達できる金額
ファクタリングとABLでは資金調達できる金額が違います。
ファクタリングは売掛債権の額面から手数料を引いた分を資金化します。
ABLは流動資産を担保にした融資ですので、審査次第ではありますが売掛債権の額面以上の資金調達が可能です。
担保は売掛債権に加えて、在庫や設備なども含めることができますので、担保にするものが多いほど資金調達できる金額も増えるのが一般的です。
手元に売掛債権があり、それを元に資金調達をしたい場合は、ファクタリングよりもABLの方が大きな金額を資金調達できる可能性が高くなります。
手数料
ファクタリングの手数料は業者が自由に決められます。融資のように貸金業法が適用されないため、20%以上の手数料を設定することも可能です。
とはいえファクタリングの手数料にはある程度の相場があり、2社間であれば5%〜20%、3社間では1%〜9%となっています。あまりにも手数料が高い場合は、悪徳業者の可能性があるため注意する必要があります。
ABLは融資のため、貸金業法の利息上限が適用されます。ただし、上限の20%になることはほとんどなく、年利2%〜10%が相場となっています。
そして、ここで注意したいのは、ABLが年利に対し、ファクタリングは月利であるということです。
仮にファクタリングが5%の手数料で利用できるとして、年利換算では60%の手数料です。ABLの年利2%〜4%と比べるとかなりの違いであることがお分かりいただけると思います。
ファクタリングとABLで手数料を比較すると、ABLの方が低いという結果になります。
入金スピード
入金スピードはファクタリングが優勢です。書類や審査など条件が揃えば最短即日で振り込んでくれる業者も多くなりました。
対してABLは資金が手元に来るまでに最短でも2週間ほどかかってしまいます。
登記手続きや、担保評価の調査などで時間がかかるというのが理由に挙げられます。
ファクタリングとABLで入金スピードを比較すると、ファクタリングに軍配が上がります。
債権譲渡登記
先述しましたが、債権譲渡登記は売掛債権がいつ誰に渡ったものかを記録するためのものです。ファクタリングもABLもいずれも登記を必要とします。
しかし、ファクタリングにおいては債権譲渡登記を留保するところもあります。
登記は債権1件あたり7,500円、登記する司法書士報酬が5万円〜10万円かかるため、コスト面で考えると登記を設定しない方がベターです。
そう考えると、確実に登記をするABLよりも、登記を留保する業者もあるファクタリングの方が、コスト面では優勢だと言えるでしょう。
個人事業主・フリーランスへの対応
近年、ファクタリングでは中小企業のみならず、個人事業主やフリーランスを対象として売掛金の買取を行っているところもあります。
ABLは法人向けの融資商品として提供されているため、個人は利用することができません。なぜなら、ABLは企業が保有する資産を担保として融資を行うものであり、個人的な資産を担保にするのは困難であるからです。
個人事業主が利用できる資金調達をABLとファクタリングで比較するのであれば、ファクタリング一択となります。
貸し倒れのリスク
ファクタリングは売掛債権を買い取ってもらって資金調達する方法です。融資のように担保ではないため、売掛金の入金がなくても利用者側が代わりに弁済する必要がありません。
これを償還請求権なし(ノンリコース)の契約と言います。
ABLのように売掛債権を担保とした融資には償還請求権があります。売掛金が回収できなくなった場合は、利用者側が責任を負う必要があります。
貸し倒れのリスクを最小限に抑えたいなら、ABLよりもファクタリングがおすすめです。
オンライン対応
2020年に起きた新型コロナウイルスの影響で、多くの業種において在宅でサービスを受けられるところが増えてきました。
ファクタリングでもオンラインでの対応が可能となり、必要書類はメールやLINEで添付、契約書はクラウドを用いるなどして、対面でなくても資金調達を受けられるケースが増えてきました。今までは対面契約のために出張が必要だった場合でも、オンライン契約によってスケジュール調整も楽になりましたし、地方にお住まいの方でもファクタリング業者の選択肢が増えるようになりました。
対してABLは、まだオンライン契約に対応しているところはほとんどありません。
契約後も定期的な報告義務があるため、どうしてもオンラインでは難しい場面もあります。
オンライン対応の条件を資金調達の一番の条件に考える人は少ないかもしれませんが、一つの判断要素として見ておくと、より自分に合った資金調達ができるでしょう。
ファクタリングがおすすめの人
ファクタリングとABLの特徴やそれぞれの違いを比較してみたところで、ファクタリングはどのような人におすすめかまとめました。
● すぐにでも資金調達をしたい人
● 個人事業主やフリーランス
● 売掛先の倒産により弁済義務を負いたくない人
● 融資を受けられない人
● これから融資を受ける人
すぐにでも資金調達をしたい人
資金調達のスピードはABLよりもファクタリングが優勢です。ABLが約2週間程度の時間がかかるのに対し、ファクタリングは最短即日、遅くても3日〜1週間程度で資金調達が可能です。急に現金が必要になった人はファクタリングがおすすめです。
個人事業主やフリーランス
ABLは企業が保有する財産を担保にし、個人が保有するものは担保できません。そのため、個人が資金調達をするとしたらABLではなくファクタリングを選ぶ必要があります。
法人よりも信用が低い個人は、融資を受けられにくいといったデメリットがありますが、ファクタリングは基本的には買い取ってもらう請求書を発行する売掛先が審査の対象になりますので、個人やフリーランスの人でも利用しやすいのが特徴です。
売掛先の倒産により弁済義務を負いたくない人
ファクタリングは基本的に償還請求権のない契約(ノンリコース)です。そのため、売掛先の倒産などで貸し倒れとなってしまった場合、利用者が売掛債権の金額を負担する必要がありません。
ABLは償還請求権がありますので、未回収でも必ず資金調達した分は弁済しなければなりません。
ファクタリングの基本的な審査は売掛先の信用や経営状況です。もちろん、売掛先が倒産しそうな場合はファクタリングの承認を下さない可能性も高いですが、ファクタリングは基本的に審査が通りやすいとされています。貸し倒れのリスクを防ぎたい場合は、ファクタリングを利用するのが有効でしょう。
融資を受けられない人
ファクタリングは滞納があるなどで融資を受けられない人にもおすすめです。
銀行融資やビジネスローンは信用情報や決算書などを厳しくチェックされます。融資の審査に落ちてしまった人は資金調達をしたい場合は、ファクタリングを選ぶと良いでしょう。
これから銀行融資を受ける予定がある人
先程とは逆に、これから銀行融資を受ける予定がある人もファクタリングはおすすめです。
ファクタリングを利用した資金調達は、貸借対照表上にてオフバランス化ができます。融資で資金調達をすると、負債や総資産が増えるため、会計上の金額が肥大化してしまうのです。
ファクタリングであれば、負債を増やさず、むしろバランスシートをスリム化できるため、融資の担当者に良い印象を与えることができます。
ABLがおすすめの人
ABLは資金調達までに日数がかかってしまいますが、手数料が低いといったメリットがあるため、急な資金調達の場面ではない時に検討するのがおすすめです。
● 手数料を抑えたい
● 在庫などの動産や売掛債権を多く抱えている
● 資金が必要になるまでにまだ時間がある人
手数料を抑えたい
ファクタリングとABLでは、ABLがやや手数料が低めです。
一般的にはABLを使う際、金融機関が信用保証協会の保証をつけます。そのため、金融機関にもよりますが、低いところでは2%〜4%程度です。
また、ファクタリングは売掛先から入金後、一括で弁済するのに対し、ABLは分割で返済していきます。分割返済の期間は長くても1年程度です。毎月の返済の負担なども含めて考えると、ファクタリングよりもABLの方が負担は少ないと言えるでしょう。
在庫など動産を多くかかえている
ABLは設備や在庫といった動産、売掛債権などを担保にして資金調達ができます。
ファクタリングは売掛債権や、案件着手前の注文書、発注書が買取対象ですが、ABLは売掛債権以外にも、在庫や設備といった保有財産をまとめて担保にできます。
売掛債権の額面以上の資金調達をしたい場合や、流動資産を多く持っている場合はABLがおすすめです。
資金が必要になるまでにまだ時間がある人
すぐに資金調達をしたい人はファクタリングがおすすめですが、資金が必要になるまでにまだ時間がある人や、何かあった時のためにとりあえず枠だけ確保しておきたいという人にもABLがおすすめです。
枠だけ確保しておきたい場合には、当座貸越枠を設定し、必要に応じて借入をすることもできます。
ファクタリングとABLまとめ
ファクタリングとABLの違いを解説しました。
どちらも売掛債権を使った資金調達ですが、ファクタリングは買取に対し、ABLは融資です。手数料の上限値や、年利と月利、審査の対象、償還請求権、入金スピードなどが違うことがお分かりいただけたと思います。
どちらが良い悪いというよりも、自社の状況に合わせてファクタリングとABLを使い分けるのが賢い選択だと言えるでしょう。ABLに関しては売掛債権だけではなく、在庫や設備なども担保にできますので、売掛債権がなくても利用できます。
資金調達の方法はいろいろあります。メリットデメリット、利用の流れなどを掴むことで、スムーズな資金調達を実現させるようにしましょう。